イギリスのEU離脱について(前編)

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メイ首相の完全離脱に関する宣言

現地時間17日、イギリスのテリーザ・メイ首相がEUからの明確な離脱を表明した。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10504433381807684657504582564182564631906
これにより、いわゆる「ハードランディング」BREXITへと向かうことになる。
基本的には移民政策を自国で決定できる権限を取り戻すことを主に置くが、関税同盟からも離脱しあらたに各国または各貿易圏と交渉することとなる。EUの経済ブロックから抜けるものの、対外貿易はWTOの枠内で行われる。
ただし、演説の全文を参照すると最終的に議会にかけるなど、メイ氏自身が離脱反対組だった名残も見ることができる。

EUの理念

EUは、表向き経済での統合を目指しているが、基本となる自由貿易圏、関税同盟、単一市場以外に、EU圏内における人的移動や外国人の参政権、ユーロを共通通貨とする通貨圏、NATOと重なる軍事同盟それぞれをオーバーラップさせるものとなる。
また、フランスを中心としてドイツ封じ込めの手段としてこの枠組みを定義することもできる。WW2までの歴史から、同一圏内に取り込むことにより過去の軍事的アグレッションを抑止する事も語られる。
例外的なイギリスを除き、通貨としてユーロを用いることを定め、遠い未来にヨーロッパ連邦を作ろうとの思想に基づく。

EUの問題とは 〜その一部のみでも大きな問題を含む

欧州理事会は存在するものの、各国の主権は一部制限されるもののそれぞれの国家に存在する。この中で意思を統一しようとするめることによって、域内の自由化と反して各国民の権利が相対的に抑えられることになる。
商品・サービス・金・人の自由な移動を定め、これにより単一市場としての価値(経済圏としての設立理由を主として見た場合に)をベースとする。これにより、EU圏外の各国はEUのみとの貿易交渉を行うことにより市場アクセスができる他、逆にその(少なくとも見た目は)巨大な市場としての立場を確保することにより、対外的交渉力を大きくすることができると考えた。
国対国(貿易圏)の場合市場の大きさにより多大なメリットを享受するわけだが、EUの経済思想にはEU各国の国民生活や感情を織り込むことが出来な(足りな)かった。EU圏、そして各国の経済規模が拡大すればその国民も豊かになるという単純化した考えに基づけば規模のメリットを活かして成功すると考えてきた。
経済面を後に譲るとしても、主として「人」の移動に関する問題が大きすぎたことは誰もが知ることとなった。文化的側面としても隣人が急に異文化人となればそれぞれは戸惑う。宗教的不安もかつてキリスト教同士ですら殺しあった経験のある者からすれば異教徒が存在すればより不安になることは想像に難くない。
経済的面も含めれば、賃金水準の高い国には他国からの「人の移動の」が頻繁になり、それは経済原理から安価な人材に仕事が流れ、その地域に元から存在する住民から仕事を奪う。
そもそも国境や関税、非関税障壁のある現在の世界においても「底辺への競争」が起こる。「世界」ほど格差のないEU圏内だとしても、ハードルを圧倒的に下げた状態ではそのスピードは桁違いである。(存在するハードルは言語と物理的な距離、その距離を移動するための費用のみである。)同一圏内として賃金の面から見ても急速に(低い方へ)平滑化されていく。
挙げればきりがないが、各々の国民に不安と不満がたまり、足元から揺らいでいく構造をそもそも内包しているのである。

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後編予告

・共通通貨ユーロの問題

・イギリスの判断

・EU瓦解は自然の流れ

・EU、そして各国の今後は

 

 

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